絵画における二大技法書:これは人体描写の座右の書!ーJ・ハム『人体デッサンの技法』ー
前回、A・ルーミス『やさしい人体画』の紹介の所で、二大技法書とのタイトルをつけた。
今回はもう一つ素晴らしい技法書の紹介をしようと思う。
それがこれである。
ジャック・ハム(著),島田照代(訳)『人体デッサンの技法』島田出版 1976年
この本自体は大判だが、ページ数が120ページとさほど多くなく、一見頼りない印象をもつが、なかなかどうして、内容はかなり濃い。
人体のあらゆる箇所を描くためのアンチョコのような内容で、
どこからどこへはどのくらいの距離なのか?
関節可動域はどこまでなのか?
どういう風に描くとそれらしく見えるのか?
というような、人体を描く上で痒い所に手が届く内容が盛りだくさんである。
この本に付箋で各章を素早く引けるようにして文字通り辞書的に使ったりする人もいるらしい。
よく人体を描いていると、どうしても形の把握が曖昧な部分が出てくる。
特に初心者が陥りがちなのが、両手・両足の描写だ。
頭や胴体がある意味動かないパーツであるのと反対に、
両手両足の可動域は広く、末端の部分の手・足の表現は非常に難しい。
そういう人体描写における難しい場所を、サポートしてくれる存在としてこれほど頼もしい本はそうそう無いと思う。
実際に主もオリジナルの絵を描くときに、この本を辞書的に使う事が多い。
この本を何度も引いて、繰り返し描いているうちに、
自然と人体の適切な描写を身につけられそうである。
漫画やイラストを描く人には強くすすめたい。
いや、必携といっていいほどの名著である。
ジャック・ハム(著),島田照代(訳)『人体デッサンの技法』島田出版 1976年
【目次】
1・頭部描写への導入
2・顔の造作の描き方
3・髪の描き方
4・頭部の型と比較について
5・さまざまな年代の描き方
6・全身描写の基本
7・トルソー(胴体)と全身
8・全身描写についての原則
9・首と肩の描き方
10・腕の描き方
11・手の描き方
12・脚の描き方
13・足の描き方
14・衣服の描き方
絵画における二大技法書:やさしくないがツボを押さえるーA・ルーミス『やさしい人物画』ー
学校の勉強に使われる基準となる本。それが教科書である。
絵画の世界にもそれに相当する本が存在する。
A・ルーミス(著).北村考一(訳)『やさしい人物画』マール社 1976年
この本がその一つだ。
アニメーターや漫画家のように、オリジナルで人体を描く仕事をしている人達にとって
知る人ぞ知るという存在らしい。
主がこの本の存在を知ったのは
成冨ミヲリ (著)『絵はすぐに上手くならない』彩流社 2015年
↑この本の中で紹介されていた所から始まる。
Amazonレビューでも高評価だったので、たまらず書店で買い求めてみたのだが、
なるほどなるほど、確かに良い本だ。
内容的には本のタイトルにある通り、人体をいかに描くか?という事に
焦点が当てられている。
前半部は人体のプロポーションの比率と、
遠近法上での人体の置き方などが特に詳細に説明されている。
後半部はルーミス自身のデッサン画を中心に、やや理論的な事が中心となって書かれている。
前半部は漫画やイラストを描く人達には参考になり、
後半部はデッサンを描こうという人達に参考になる内容だ。
デッサンは画力を上げるために行われる古典的な練習方法だが、人によっては不要論もある。
だが、絵を描き、上手くなりたいと思う人にとっては
デッサン的な視点も知っておいて絶対に損は無いだろう。
この本は人体デッサンの基本知識。もしくは人体プロポーションの知識を得るために
活用すると良いと感じた。
某掲示板では、この本ともう一冊の技法書を何回も繰り返し模写することを勧めていたが、
確かに、この内容のものをしっかりマスターできれば、人体を描く上での基礎はしっかり
身に着くだろう。
主も目下この本を参考にして人体のプロポーション比率を勉強中である。
A・ルーミス(著).北村考一(訳)『やさしい人物画』マール社 1976年
1.人物画へのアプローチ
2.骨と筋肉
3.ブロック形、面、遠近法、陰影
4.実際の人物の描き方:方法と手順
5.立っている人物
6.動きのある人物:回転とひねり
7.前進運動:重心線の前傾
8.バランス、リズム、描写
9.ひざまづいたり、かがんだり、座っている人物
10.よりかかった姿勢
11.頭、手、足
12.衣服を身に着けた全身像
絵を描くための基礎の基礎を学べるーB・ドットソン『デッサンの55の秘訣』ー
主が最初に紹介したい技法書はこれです。
B・ドットソン(著),田辺晴美(訳)『デッサンの55の秘訣』エルテ出版 1991年
絵を上手く描くにはどうすればいいのか?―
絵を独学で学ぶ人にとって、これは永遠のテーマだと思います。
「描けば描くほど上手くなるから、描き続けることだ」
というのが巷でよく言われる上達論なんですが、
主はかれこれ子供の頃から何年も絵を描き続けているにも関わらず、
どーーーーーしても「上手い絵」というものが描けない。
いわゆる「素人臭さが抜けない絵」から脱出できないのです。
これはもう基礎から学びなおすしかないと思っていた時期に、この本と出会いました。
以前、絵画入門書としては有名な
ベティ・エドワーズ(著),野中邦子(訳)『決定版 脳の右側で描け』河出書房新社 2013年
を読んで、<描く対象をシンボル化(言語化)しないで描く>という方法を知ったのですが、
『脳の右側で描け』は説明文がやや冗長な所があり、なかなか練習方法を示した部分まで
たどり着けず、イライラした覚えがあります。
『脳の右側で描け』は理論書としてはいいのでしょうが、
実践をガツガツやって、ガリガリ画力を上げたいぜ!
という人には文字だらけの本という印象を与えてしまいがちです。
しかし、ここで紹介する『デッサンの55の秘訣』は、
『脳の右側で描け』とほぼ同様の方法論を紹介しながら、
文章的にもったいづけた印象が無く、課題もテンポよく配置されており、
スムーズに実習に移れるよう構成されています。
また各章の終わりに課題に対しての自己評価シートが設けられており、
客観的に自身の問題点を洗い出せる点も好印象!
内容的にも非常にコンパクトかつバランスよくまとまっているのも特徴で、
輪郭線・遠近法・陰影・構図など、
絵を描く上で基礎となる知識が一通り掲載されています。
もし今まで絵を描いたことが全く無く、これから絵を趣味にしていきたい人は
入門書として、この本を強くオススメしますね。
絵を長年描いてきて自分にとっても、
絵を上手く描くためのノウハウとはこういうことだったのか
と目からウロコが落ちたぐらいです。
この本を足がかりに、各技法のもっと深い部分は他の本に任せるという形にすれば
まず間違いないんじゃないかなーと思いますね。
B・ドットソン(著),田辺晴美(訳)『デッサンの55の秘訣』エルテ出版 1991年
第一章 デッサンのプロセス
第二章 画家の「筆跡」
第三章 プロポーション:ものの計算
第四章 光の錯覚
第五章 奥行きの錯覚
第六章 テクスチュアの錯覚
第七章 パターンと構図
第八章 描くことと想像力